西向名人を破って新名人の座を獲得した山村選手(Photo by 報知新聞)

「第４４回報知キス釣り選手権・名人戦」は８日、徳島・北の脇海岸で開催された。鳥取、徳島の両予選を勝ち抜いた選手、前年大会上位シード選手、歴代選手権覇者、歴代名人ら４１人が参加。選手権は地元の山村満也選手（５２）＝徳島鱗友サーフ＝が６年ぶり２回目の優勝。続いて行われた名人戦でも西向雅之・第３９～４３期報知キス釣り名人（３６）＝北陸漁友会＝を４４―２９尾で破り、第４４期報知キス釣り名人の座に就いた。
キス釣り歴２８年　日焼けした顔が、やっとほころんだ。銀色に輝く名人杯を両手に抱えた山村選手。「胃腸の調子が悪く、朝６回もトイレに行った。勝てるとは夢にも思わなかった。（選手権の）１回戦をギリギリの８位で勝ち上がったところから運があったのかな」。合計６時間にも及ぶ熱闘を戦い抜き、安どの笑みを見せた。

名人戦の様子（左は西向名人、奥は山村選手）(Photo by 報知新聞)

状況判断がさえた。午前１１時５０分から、南寄りのエリア約４０メートルの範囲で行われた名人戦。前半の２投目で“変化”に気が付いた。「（選手権の）決勝戦では足元でアタリがあったのに、２５～３０メートルほど沖でアタリが出た」。選手権でアタリが多かった波口や足元ではなく、少し沖めに狙いを合わせた。４０メートルほど仕掛けを投げ、１０メートルほど早巻きしてから、「アタリがあったポイントで待っている感じで」超スローペースのリーリング。

また、餌も選手権では好反応だったイシゴカイからチロリに替えた。５投目以降は思うように釣果を伸ばせなかった西向名人と対照的に、８投目で５連、９投目で４連。場所を交代した後半も着実にリードを広げていった。

選手が釣ったキスを数える野村競技委員長（右は三宅競技委員）(Photo by 報知新聞)

徳島・鳴門市に在住。自宅から近い里浦海岸に年間５０～６０回も通って腕を磨いている。キス釣り歴は２８年ほど。松本恒雄さん（第９期）、瀬尾捷征さん（第１２期）、矢野勝彦さん（第２３～２５期）と過去３人も名人を輩出した名門クラブ、徳島鱗友サーフに入ったのが、本格的に競技を始めたきっかけだった。

選手権の上位３選手（左から鈴木、山村、松尾の各選手）(Photo by 報知新聞)

初優勝した６年前、伊達浩憲さんに挑戦した名人戦（淡路島・厚浜海岸）では２―３で涙をのんだ。「西向さんが名人になったときに『山村さん、待ってますよ』と言ってくれたのがうれしかった。西向さんを目標にして、同じクラブの仲間や友人たちと交流しながら名人を目指してきた。これからも技術やマナーをもっと磨いて歴代名人に恥じない存在になりたい」。やっと栄冠を手にした５２歳は、まだまだ進化の余地を秘めている。

〜経過〜
【１回戦】　海岸の南北約１２００メートルをＡ、Ｂの２ブロックに分けて、午前６時５分から２時間行った。天候は曇り時々雨、微風で波も穏やか。全体的にキスは高活性だったが、場所によって釣果にムラがあった。釣れたキスの平均サイズは１０センチほど。アタリは波口に集中した。海に向かって左側のＡブロックは、鳥取予選５位の横山武選手が７９尾でトップ。反対側のＢブロックは、鳥取予選３位の武之森浩選手が８４尾で１位になり、ベテランの松尾幸浩選手と歴代名人の伊達浩憲選手が８２尾で続いた。Ａ、Ｂ各ブロック上位８位までの１６選手が決勝戦に進出。
【決勝戦】　海岸の中央から南北約４００メートルのエリアで、午前８時５０分から２時間行った。キスの食いが次第に落ちる中、ポイント選びのうまい選手や機動力を生かして数を稼いだ選手が上位に進出。優勝の地元・山村選手ら上位３人が２尾差にひしめき合う激戦だった。

西向雅之・第３９～４３期報知キス釣り名人「タイミングと巡り合わせが悪かった。手返しが早くても釣れないと意味がない。自分には、まだまだ足りないところがいっぱいある。また山村さんと対戦できるように頑張りたい」

野村道雄・競技委員長「場所によってムラがあり、釣れるポイントが限られる中でも選手権で上位に入った選手は立派な成績を残した。名人戦は、じっくり巻いて確実にキスを掛けた山村選手のスタイルが合っていたのだろう。西向名人はまだ若いので返り咲きを狙ってほしい」